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(3)「電子式船荷証券」関連の問題点
「電子式船荷証券のためのCMI規則」の制定により、船荷証券のEDI化へのための環境整備がされたということができるが、その具体化に関連しては、次のような問題点のあることが指摘されている。
?登場機関に係るもの
電子式船荷証券の導入に当たっては、「船荷証券」記載の事項をコンピュータに登録することになり、「CMI規則」では、運送人(船会社)が登録機関になることが予定されている。
船荷証券の流通には、荷送人(荷主)、運送人(船会社)、銀行など多数の当事者が関与することになるが、船荷証券のEDI化に当たってどの当事者が登録機関になるかについては、関係各方面の関心が寄せられていた。
仮に、銀行が登録機関になるとすれば、荷主は金の流れに加えて物の流れまでも銀行に把握されることになるので、荷主筋からの強い抵抗が予想されることになる(現に、米英銀行から提案のあった「電子式船荷証券」類似の構想が、関係者によりその受入れが拒否されたという経緯もある。)。
登録機関の設置に関連した最も大きな問題は、登録システムの構築に要する費用の負担に係るものである。
つまり、電子式船荷証券の導入に当たって、現実に、船会社が巨額にのぼるシステム構築費用を負担することになるのかということである。
?運送品の権利移転に係るもの
CMI規則による運送品の取引のプロセスでは、運送品の所持人は、運送品の支配・処分権を第三者(新しく運送品の所持人となる者)に移転しようとするときは、その旨(意思)を運送人に通知することとされている。この通知を受けた運送人は、現在の所持者からの通知を確認したうえで、新しく所持人となる者に対して船荷証券の必要記載事項をEDIにより通知することになる。そして、新しく所持人となる者が、運送品の支配・処分権(債権)を受領する旨を運送人に通知し、運送人から、新たな個人キーの発給を受けると、議受人(新しく所持人となる者)は、運送品に対する権利者であるという法的な地位が確定することになることとされている。
以上は、「電子式船荷証券のためのCMI規則」の規定に基づくEDI化された船荷証券に係る権利移転のプロセスであるが、同規則においては、運送品そのものの所有権等物権の移転を関する法律構成《(注)参照》に関しては、特別の規定は設けられていない。つまり、「CMI規則」では、物権の移転の問題は取り扱わないこととされている。
(注)物権移転の法律構成
CMI規則による運送品の取引のプロセス(物権移転)を、わが国の民法の規定に

 

 

 

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